顔面神経麻痺は発症後72時間が重要?早期治療がすすめられる理由
「朝起きたら、顔の片側が動かなくなっていた」
「口から水がこぼれる」
「目が閉じにくい」
突然このような症状が現れると、誰でも驚いてしまいます。
顔面神経麻痺について調べていると、
「発症後72時間以内が重要」
という言葉を目にすることがあります。
では、なぜ72時間なのでしょうか?
そして、72時間を過ぎてしまったら、もう治療の意味はないのでしょうか?
今回は、顔面神経麻痺と「72時間」の関係について、できるだけわかりやすく解説します。
なぜ「72時間」が重要なの?
顔面神経麻痺の代表的な原因の一つが、ベル麻痺です。
ベル麻痺では、顔面神経に炎症や浮腫(むくみ)が生じ、神経の働きが障害されると考えられています。
顔面神経は、側頭骨の中にある細い骨のトンネルを通っています。
そのため、神経が炎症によって腫れると、限られたスペースの中で神経が圧迫され、さらに障害が進む可能性があります。
そこで重要になるのが、できるだけ早く炎症を抑えることです。
ステロイド治療は早く始めるほど重要
ベル麻痺では、ステロイド薬による治療が標準的な治療の一つです。
日本の「顔面神経麻痺診療ガイドライン」の2023年改訂版では、ベル麻痺に対する全身ステロイド治療が強く推奨されています。
また、海外の診療ガイドラインでも、ベル麻痺では発症から72時間以内に経口ステロイドを開始することが推奨されています。
つまり「72時間」というのは、
72時間を1分でも過ぎたら治療できない
という意味ではありません。
できるだけ早い段階で適切な治療を開始することが重要
という意味です。
「72時間を過ぎたら、もう遅い?」という誤解
ここは非常に大切です。
発症から72時間を過ぎてしまったからといって、
「もう治らない」
「治療しても意味がない」
ということではありません。
72時間を過ぎた場合でも、患者さんの状態を診察したうえで治療が行われることがあります。
したがって、
「昨日発症したけれど、今日は病院に行けなかった」
「72時間を過ぎてしまった」
という場合でも、自己判断で諦める必要はありません。
顔の麻痺が突然出現した場合は、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。
そもそも「顔面神経麻痺=ベル麻痺」とは限りません
もう一つ重要なことがあります。
顔面神経麻痺が起こったからといって、すべてがベル麻痺というわけではありません。
例えば、
・ラムゼイ・ハント症候群
・中耳炎などによる顔面神経麻痺
・外傷によるもの
・腫瘍などによるもの
・脳血管障害など、顔面神経以外の病気
など、さまざまな原因があります。
そのため、
「顔が動かなくなったから、とりあえず鍼灸院へ」
という判断ではなく、まず医療機関で原因を確認することが重要です。
目が閉じにくい場合は、目の保護も重要
顔面神経麻痺では、まぶたを閉じる筋肉も麻痺することがあります。
目が十分に閉じられない状態が続くと、角膜が乾燥したり傷ついたりする可能性があります。
そのため、目が閉じにくい場合には、医師の指示のもとで適切な眼の保護を行うことが重要です。
顔面神経麻痺の診療では、麻痺そのものだけでなく、こうした合併症を防ぐことも大切です。
鍼灸は「72時間以内に受けなければ意味がない」の?
ここも誤解しないでいただきたいところです。
「顔面神経麻痺は72時間が重要」と聞くと、
「鍼灸も72時間以内に始めた方がいいの?」
と思われるかもしれません。
しかし、72時間という時間的な目安は、主にベル麻痺に対する薬物治療、特にステロイド治療についての話です。
鍼灸については、日本の2023年改訂ガイドラインでは検討されていますが、ステロイド治療のように強く推奨されているわけではありません。
そのため、顔面神経麻痺が疑われる場合は、まず医療機関で診断・治療を受けることが基本です。
鍼灸を検討する場合も、医療機関での診断や治療と並行して、患者さんの状態に応じて考えることが大切です。
早期受診が何より大切
顔面神経麻痺は、突然発症することがあります。
「少し様子を見よう」
と思っているうちに時間が経ってしまうこともあります。
しかし、ベル麻痺では早期のステロイド治療が推奨されています。
だからこそ、
「顔の片側が突然動かなくなった」
という場合には、できるだけ早く医療機関を受診してください。
まとめ
顔面神経麻痺で「発症後72時間が重要」と言われるのは、ベル麻痺に対するステロイド治療をできるだけ早く開始することが重要だからです。
ただし、
72時間を過ぎたら治らない、という意味ではありません。
また、顔面神経麻痺にはベル麻痺以外にもさまざまな原因があります。
突然顔が動かなくなった場合には、まず医療機関で原因を確認し、適切な治療を受けることが大切です。
そのうえで、回復期や後遺症について不安がある場合には、主治医に相談しながら、その後のケアについて考えていきましょう。



